Rasmus Faber – Está Loca / Pra Mim

スウェーデンのプロデューサー、ラテン・ハウスをダブルリリースで再び提示

Review: Dominika Radziwon

先日、スウェーデン出身のプロデューサー/DJ/作曲家/ピアニストであるラスムス・ファーバーに、ラテン・ハウスシーンへの復帰作「Seem To Last」について話を伺いました。その会話からは、クラブ・サウンドのルーツに立ち返りつつ、20年にわたる音楽的探求を土台として新たに築いていくアーティストの姿が浮かび上がりました。 そして今、ファーバーは自身のレーベル「Farplane Records」から2作同時リリースを発表。エネルギッシュな「Está Loca」と官能的な「Pra Mim 。この2曲は、ソウルフルでラテンのエッセンスを取り入れたハウスに対する、彼の新たなフォーカスの二つの側面を鮮やかに示しています。

ファーバーは、メロディックでソウルフルなハウス・ミュージックに深いルーツを持っています。2000年代には、ジャズやラテンの要素、そして生楽器の演奏を組み合わせ、クラブ仕様に仕上げたリリースで一躍注目を集めました。彼の楽曲は瞬く間にDefectedやArmadaといった名門レーベルのカタログに加わり、Axwell、Deadmau5、Kaskadeといったアーティストとのコラボレーションへとつながっていきました。

この10年間で、彼の活動はダンスフロアをはるかに超えた広がりを見せています。アニメやVRプラットフォーム、さらには『マクロスΔ』『メタルギアソリッド』『Honor of Kings』といった大作ゲームシリーズの音楽を手がけ、その中で「Hollywood Music in Media Award」を受賞しました。さらに、長年続くプロジェクト「Platina Jazz」では、アニメの名曲をジャズの視点で再構築し、9枚のアルバムを通じて日本国内外に熱心なファン層を築き上げています。

今回、Farplaneからの新たなリリースによって、ラスムス・ファーバーは自身の原点へと立ち返ります。ソウルフルなグルーヴ、ラテンのリズム、生演奏のダイナミズム――これらが融合するプロジェクトは、彼が築き上げてきたサウンドを、20年の研鑽を経てさらに洗練させたものです。初心に回帰しながらも、現代のダンスフロアに真正面から響く新たな章が、ここから始まっています。

Rasmus Faber — Está Loca | Farplane Records

7月25日に先行リリースされた「Está Loca」は、カーニバルのスピリットに満ちあふれた一曲です。力強いラテン・ベースラインを軸に、ファーバーらしいピアノのフック、太陽の光を感じさせるギター、軽やかに舞うフルート、そしてキレのあるパーカッションが重なり合います。そこに遊び心あふれるヴォーカル・リフレインが加わることで、作品全体は歓喜に満ちたハイエナジーなアンセムへと昇華。深夜のパーティを鮮やかに彩る輝きを放ち、ファーバーの最も躍動的な一面を存分に示しています。

Rasmus Faber — Pra Mim | Farplane Records

対照的に、8月29日にリリースされた「Pra Mim」は、同じ物語のよりパーソナルな側面を映し出しています。柔らかなギターのメロディとスムーズなヴォーカルを特徴とし、華美さではなくエレガンスに焦点を当てた一曲です。プールサイドでのリラックスタイムや夕暮れのサンセットセットに最適な、洗練されたスタイルと滑らかさを備えています。このトラックは、ファーバーがエネルギッシュなクラブ・ヒットから繊細で情感豊かなリズムまで自在に行き来できることを証明しています。

「Está Loca」と「Pra Mim」は、前作「Seem To Last」から始まった旅をさらに推し進め、Farplaneから展開される新たなラテン・ハウス・シリーズの輪郭を描き出します。一方はダンスフロアを熱狂させ、もう一方は内省を促す――その両立は、エネルギーと深みを兼ね備えたアルバム・プロジェクトへの道筋を示しているのです。


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